
エヴァンゲリオン完結から振り返る「呪縛」と「解放」
アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の放送開始から四半世紀以上。社会現象となり、多くの人の心に「棘」のようなものを残したこの作品は、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』をもって本当の完結を迎えました。
公開当時、映画館へ足を運ぶ足取りが重かったことを今でも覚えています。「もし、また終わらなかったら?」「絶望で終わったら?」そんな不安を抱えていたのは私だけではなかったはずです。
しかし、完結から時間が経った今だからこそ断言できます。
「この映画は、すべてのエヴァファン、そしてかつて子供だった大人たちへの祝福である」と。
本記事では、物語の核心的なネタバレは避けつつ、なぜ本作が「伝説」となったのか、そしてなぜ私たちがこれほどまでに心を揺さぶられたのかを、改めて深掘りしていきたいと思います。
「序・破・急」そして繰り返される記号「:||」の意味
新劇場版シリーズは当初、雅楽の構成である「序・破・急」の三部作で完結すると予想されていました。
- 序:TV版をなぞりつつ、圧倒的な映像美で再構築された世界。
- 破:新たなキャラクターの登場、そして物語の崩壊(変化)の始まり。
- Q(急):誰も予想しなかった「14年後」の世界と、徹底的な絶望。
特に2012年公開の『Q』は衝撃的でした。主人公のシンジ同様、観客である私たちも「わけがわからない」状態に突き落とされ、そこから9年という長い「待機時間(あるいは熟成期間)」を過ごすことになります。
そして満を持して公開された『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』。
タイトルの末尾にある音楽記号「:||(反復記号)」は、繰り返すのか、それとも繰り返しを終えるのか。様々な憶測を呼びました。
結論から言えば、この作品は「繰り返しからの脱却」を描いています。永遠に終わらないと思われた「エヴァの物語」を、庵野秀明監督自身が、そしてキャラクターたちが、自らの手で幕を引く。そのエネルギーに圧倒される作品でした。
「さようなら」は悲しい言葉ではない
劇中のキャッチコピーとしても使われた重要なセリフ。
「さようなら、すべてのエヴァンゲリオン」
通常、「さようなら」は別れの言葉として寂しさを伴います。しかし、本作における「さようなら」は違いました。
大人になるための儀式
旧劇場版『Air/まごころを、君に』が「拒絶と他者への恐怖」で終わったのに対し、シン・エヴァンゲリオンは「受容と自立」で幕を閉じます。
劇中で描かれる死や絶望でさえも、後ろ向きなものではなく、次に進むためのステップとして描かれています。これは、シンジ君の成長物語であると同時に、長年エヴァに囚われてきた私たち観客を「エヴァのない現実世界」へと優しく送り出す儀式でもありました。
見終わった後に残るのは、疲労感ではなく、憑き物が落ちたような清々しさ。心から「おめでとう、そしてありがとう」と言えるエンディングが待っています。
宇多田ヒカル『One Last Kiss』が完成させた世界
この映画を語る上で欠かせないのが、宇多田ヒカルによるテーマソング『One Last Kiss』です。
映画のラストシーン、あのタイミングで流れるイントロ。そして歌詞の世界観。
単なるタイアップ曲の枠を超え、この曲自体が「エヴァンゲリオンという作品の一部」として機能しています。
これから観る方は、ぜひ歌詞を噛み締めながらエンドロールまで席を立たずにいてください。この曲を聞き終えたとき、初めて『シン・エヴァンゲリオン』は完結します。
まとめ:まだ観ていないあなたへ
もしあなたが、「昔アニメは見たけど新劇場版は追っていない」あるいは「Qで心が折れて止まっている」のであれば、今すぐにでも完結編まで観ることを強くおすすめします。
25年以上の時を経て、庵野秀明監督がたどり着いた答え。そしてシンジ君が選んだ未来。
それを見届けることは、私たち自身の過去のわだかまりを解消する旅でもあります。
大丈夫、怖がる必要はありません。
そこには確かに、希望のある「終わり」が用意されています。
さらば、全てのエヴァンゲリオン。
そして、ありがとう。


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